1 境界のトラブル
- 隣地との間で境界の争いが起きると、一方が感情的になったりして当事者では話し合いがうまく進まず、解決に時間がかかって、ストレスとなる場合が見受けられます。
- 当事務所では、土地家屋調査士、弁護士が共同して境界トラブル解決に向けて、ご相談に乗ります。
2 境界問題を放置すると
- お隣と揉めたくないため、境界の問題を放置すると、後々困ったことになります。
- 例えば、土地を売却しようとする際、境界確定の測量を求められます(これには隣地所有者の承諾印が必要)。
そのとき、あわてて隣地にお願いをしても、隣地の人の言うことを聞かないと押印してくれないことになり、無理な要求を呑まされることになります。 - また、隣地所有者の構築物が越境した状態で長年放置していると、隣地所有者が「時効取得したから、分筆して自分の名前にしろ」と求めてくる可能性があります。たとえ隣地所有者が越境していることを分かっていても、越境が20年間続くと、時効取得の対象になります。
3 話し合い
- 土地家屋調査士が現地の杭や目印になる標識などを測量して、現況の測量図を作り、その図面に基づいて話し合いをすることからスタートします。
- 双方で合意ができれば、現況測量図を添付した合意書を作成します。
- また、実際の利用状況と、公図で示された境界線とが大きく食い違う場合は、分筆して利用状況に合わせるなどの登記手続をすることが必要になる場合もあります。
4 筆界特定制度
- 話し合いをしようと思っても、相手が自分の考えを曲げないとか、非常識なことを言うので、進まない場合があります。
そのような時は、法務局の筆界特定制度を利用することがお薦めです。 - 筆界特定では、法務局の筆界特定登記官が、「現地における公図上の境界(筆界)は、この点とこの点を結ぶ線である」という図面(筆界特定書)を作成してくれます。
- この制度を利用するためには、土地の所有者が、筆界特定申請を行います。調査費用(測量の費用等)を納めることも必要です。
- 申請をすると、筆界調査委員という専門家が、古い図面や現地の利用状況などから、境界の場所を調査してくれます。
- この調査は専門的な知識に基づくものであるため、後で説明する境界確定の裁判になったときに、有力な証拠となります。
- このため、いきなり裁判を起こすのではなく、可能であれば(費用面)、先に筆界特定制度を利用した方がよいと思われます。
- 但し、当事者が、この筆界特定書の内容を認めない場合もあります。
そのような場合は、次に述べる裁判所の手続で解決する必要があります。
5 調停
- 調停手続は、簡易裁判所で話し合いをする手続です。
話し合いといっても、当事者同士が、直接面と向かって議論するのではなく、裁判所から選任された調停委員という中立の立場の人(境界問題では、土地家屋調査士などの専門家も加わる)が間に入ってくれます。
自分の意見や希望は、この調停委員に伝えて、調停委員から相手方に伝えてもらいます。相手方の意見や希望も、きの調停委員が聞き取って、こちらに伝えてくれます。
このため、感情的にならずに、話し合いを進めることが可能です。 - 但し、話し合いで境界を決めることはできません。
従って、境界については、概ね争いがなく、利用状況などについて話し合うケースに適しています。 - 話し合いをする手続なので、双方が了解しないと何も決まりません。
双方が了解できた場合は、その内容を裁判所が書類(調停調書)にしてくれます。
この調停調書には、判決と同じ効力があります。
一方又は双方が了解できない場合は、裁判所で判決という決定をもらう必要があるので、次に述べる訴訟手続をとることが必要になります。
6 境界確定訴訟
- 裁判所で境界を確定してもらう裁判(訴訟)です。
筆界特定手続をしていなくても裁判を起こすことは可能です。
また、筆界特定の結果が間違っていると考えられる場合や、隣地が筆界特定の内容を認めない場合などにも訴訟を提起することがあります。 - 弁護士に依頼して訴状を作成します。
この時、土地家屋調査士が作成する現況測量図が必要です。 - 裁判では、公図との整合性、境界の目印となる標識物の有無、過去の利用状況、双方の土地の面積などの事情を総合して、裁判官によって「公図上の境界が、現地ではどこになるか」が決定され、判決書で示されます。
当事者の主張(言い分)には拘束されないので、原告も被告も主張していない線が境界線とされることもあります。 - この訴訟手続の中で、原告と被告の双方が、自分の主張する線が境界として正しい線であることを証明していくことになります。
また、裁判所が土地家屋調査士に「鑑定測量」を命じて、判決に用いる図面を作成することになりますが、その費用負担(鑑定費用)は当事者が負担することになります。
7 所有権確認訴訟
- 上記の境界確定訴訟は、「公図上の境界が、現地ではどこになるか」を決める裁判です。
所有権の範囲は、公図上の境界だけでは決まりません。取得時効などで、所有権の範囲が動くためです。
このため、実際の利用状況が所有権の範囲と合致しているかは、境界確定訴訟では、判断の対象にはなりません。 - このため、「自分の所有権が侵害されている」「隣地が越境していることが分かったので構築物を撤去して欲しい」「隣地の人が、勝手に自分の土地だと主張して入り込んできている」等の問題が発生している場合は、境界が決まっただけでは解決にならないのです。
- そこで、裁判所で、「どこからどこまでは、○○さんの土地である」という確認をしてもらったり、自分の土地に越境している構築物を撤去するように求める訴訟(所有権確認請求訴訟等)を提起することが必要になります。
8 時間と費用
- 筆界特定制度の申請には手数料と調査費用(測量費用等)が必要になります。
測量費用は、土地の状況に応じて変わりますが、一口に言って50万円程度といわれています。 - 境界確定訴訟において、鑑定測量を行う場合、その費用がかかります。
これも、大雑把に言って40~50万円程度は必要になると思ってください。 - また、弁護士を依頼して頂くと、当事務所の場合は、着手金22万円程度、報酬22万円程度(境界確定のみの金額)が必要になります。
- また、時間もかかります。
法務局の筆界特定制度の利用では、半年以上かかると思ってください。
裁判所の境界確定訴訟や所有権確認訴訟などは、通常、争いが激しいので、1年で解決することは珍しいと考えてください。 - 当事務所では、土地家屋調査士と弁護士が共同で作業をしますので、費用の面も含めてご相談ください。