清水誠治法律登記事務所

未成年者の相続

未成年者は原則、遺産分割協議ができない

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未成年者は原則として、遺産分割協議に参加できません。民法上、未成年者には単独で法律行為や財産の処分をする能力が認められていません。未成年者は、成年者と異なり、物事の十分な判断能力が身についていないので、民法上未成年者の法律効力を認めず(法律行為を行った場合は取り消すことができるようにして)、未成年者が単独で行った法律行為によって、未成年者自身が不利益を被らないように保護されています。そのため、遺産の取り分を決めるという重要な協議である遺産分割協議は行うことができません。

成人になるのを待って遺産分割協議してもいい?

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相続人に未成年者がいる場合に、未成年者が遺産分割協議に参加できないので、成年になるまで待ってそのあとで遺産分割協議を行ってもいいのでしょうか。
この点、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。申告期限までに申告をしなかった場合に本来の税金のほかに延滞税等がかかる場合もありますので、未成年者が成年になるまで待つということはできない場合が多いでしょう。

相続人に未成年者がいる場合は法定代理人が必要

相続人に未成年者は遺産分割協議に参加ができません。しかし未成年者であっても相続人ですので、未成年者を除外して遺産分割協議はできません。この場合は、法定代理人が未成年者に代わって遺産分割協議に参加します。

法定代理人になれるのは親権者(親)

未成年者の法定代理人は、原則として親権者(親)です。法定代理人は未成年者の利益を尊重し、様々な判断を行うことになります。

親も相続人の場合は特別代理人の選任が必要

親自身も相続人になっている場合は、相続財産を誰がどれだけ相続するのかという点で親自身の利益と未成年者である子の利益が対立する(利益相反が生じる)ことになります。このような場合には、未成年者である子に特別代理人を選任し、子の利益を図る必要があります。 法定代理人である親がいない未成年者には、法定代理人に代わる未成年後見人を選任することになります。未成年後見人は、未成年者の親族やその他の利害関係人が家庭裁判所に選任を申し立てることで裁判所が選任します。また、意思能力の認められる場合には、未成年者自身が申し立てることも可能です。

未成年の相続人が複数いる場合は、人数分の代理人が必要

未成年者の相続人が複数人いる場合には、未成年者同士の利害が対立することになるため、各々別個に代理人を選任する必要があります。法定代理人である親がいる場合であっても、相続人となる未成年者が複数人いる場合には、個々の未成年者の利益を尊重することが困難になるため、個別の代理人を選任することが求められます。

特別代理人の選任について

法定代理人である親がいる場合であっても、利益相反の観点から、遺産分割手続き等のために選任される代理人を特別代理人といいます。

特別代理人とは

法定代理人である親権者と、その子である未成年者との間で利害が対立する場合に、利益相反行為を行う場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を申したてる必要があります。母親が亡くなった場合に、共同相続人であり法定代理人である父親とその子が遺産分割協議を行うときには、まさに未成年者とその法定代理人の利害が対立することになるため、特別代理人の選任が必要となります。

申立てに必要な費用

特別代理人の選任申立手続きに必要な費用は、子1人につき収入印紙800円分および連絡用の郵便切手(地域によって異なりますが1,000円程度)となります。

必要な書類

特別代理人の選任申立手続きに必要な書類は、申立書および標準的な申立添付書類となります。添付書類は、状況に応じて適宜変わってきますが、未成年者の戸籍謄本や、親権者の戸籍謄本、利益相反に関する資料などの提出が求められます。

申し立ての流れ

特別代理人の選任申立ては、子の住所地を管轄する家庭裁判所になります。家庭裁判所に、必要な書類、収入印紙および郵便切手をそろえて、郵送もしくは窓口に持参することで申し立てを行うことができます。
裁判所の業務状況にもよりますが、およそ2週間程度で、書面審査が行われ裁判所から連絡がきます。

未成年の相続人が既婚者の場合は代理人が不要

現在民法では、未成年者が婚姻したときは、これによって成年に達したものとみなされます(婚姻による成年擬制)。その為、結婚した場合には、法律行為を行うことができますので、代理人を立てる必要なく遺産分割協議が可能です。

未成年の相続人が離婚している場合

なお、一度婚姻により成年とみなされば、その後に離婚したとしても、成年とみなされたままですので、代理人を立てる必要なく遺産分割協議ができます。

親が未成年の相続人の法定代理人になれるケース

法定代理人である親とその子が共同相続人である場合は、利益相反関係となるので、原則的に法定代理人と去ることはできません。しかし、例外的に親が共同相続人である子の法定代理人として法律行為をすることが認められる場合があります。

親が相続放棄をした場合

親が自身の相続放棄を先行して行った場合には、相続放棄をした者は初めから相続人ではなかったとものして扱われることになります。そのため、相続放棄後の親は相続人ではないため、相続において子と利害が対立するおそれがなく、子の法定代理人として子の相続手続きを行うことが可能となります。

片方の親がすでに亡くなっており、未成年者が代襲相続人になった場合

片方の親が既に亡くなっている場合に、亡くなっている親の親(子からすると祖父母)が亡くなり、相続が開始した場合には、代襲相続が生じ、子に祖父母の相続権があることになります。この場合、存命の親は相続人にはならないため、相続人である子と利害が対立するおそれはありません。そのため、このような場合には、存命の親が法定代理人として子の相続手続きを行うことが可能となります。

未成年者を含む遺産分割協議を弁護士に依頼するメリット

このように共同相続人に未成年者が含まれる場合には、具体的な遺産分割協議を行う前提として必要な手続きが生じることになります。特に遺産分割協議の場面においては、親族が亡くなったという冷静・慎重な判断が難しい状況におかれていることと思います。このような場合には、専門性をもって個別の事情に応じて、適切な手続きをご提案させていただくことが可能な弁護士にご相談いただくことが、その後の遺産分割協議等のスムーズな進行にもつながることでしょう。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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