清水誠治法律登記事務所

行方不明から7年で「死亡」とみなす?「失踪宣告」の条件と120歳問題の罠

「兄が家出をして10年以上音信不通だ」 「遺産分割をしたいが、行方不明の相続人がいて手詰まりになっている」

生死不明の状態があまりにも長期にわたる場合は、もう一つの強力な手段があります。

それが、法律上その人を「亡くなったもの」とみなす「失踪宣告(しっそうせんこく)」です。

しかし、この手続きは人の生死に関わる重大な決定であるため、完了までに長い時間を要します。また、戸籍上の「高齢者消除」を死亡と勘違いしているケースも多々あります。

今回は、相続を前に進めるための最終手段「失踪宣告」の流れと注意点について、豊橋の弁護士が解説します。

 

1. 生きている前提の「管理人」vs 死んだことにする「失踪宣告」

行方不明者がいる場合の対策は、大きく分けて2つです。

  1. 不在者財産管理人: 「どこかで生きている」前提で、代理人が財産を管理する。

  2. 失踪宣告: 「法律上、死亡した」とみなして、戸籍を抹消し、相続を開始させる。

失踪宣告が認められると、その人は法的に死亡した扱いになります。つまり、不在者財産管理人のように「本人の財産を残す」必要はなくなり、通常の相続(遺産分割)として財産を分けることが可能になります。

 

 

2. 7年待てば認められる?「普通失踪」と「特別失踪」

失踪宣告には2つのパターンがあります。

① 普通失踪(7年)

家出や蒸発など、一般的な行方不明のケースです。 最後の音信(生存確認)から**「7年間」**生死不明の状態が続いた場合に申し立てることができます。 7年の期間満了時に死亡したものとみなされます。

 

② 特別失踪(1年)

震災、飛行機事故、難破など、死亡の原因となる危難に遭遇した場合です。 その危難が去ってから「1年間」生死不明であれば申し立てが可能です。

 

3. 手続きは「最低でも半年〜1年」の長期戦!

「7年も待ったのだから、申し立てればすぐに終わるだろう」 そう思われるかもしれませんが、ここからがまた長いのです。人の生死を確定させるため、裁判所の手続きは慎重に進められます。

 

手続きの流れ(目安)

  1. 申立て: 名古屋家裁 豊橋支部などへ、利害関係人(相続人など)が申立てます。

  2. 調査: 裁判所調査官が親族への聞き取りや警察への照会を行います。

  3. 公示催告(こうじさいこく): ここが一番時間がかかります。「官報」や裁判所の掲示板で、「生きているなら名乗り出なさい」と呼びかけます。

    • 普通失踪の場合:3ヶ月以上待つ必要があります。

  4. 審判: 期間中に届出がなければ、失踪宣告の審判が下ります。

  5. 公告・確定: さらに官報への掲載や、2週間の不服申立て期間を経て、ようやく確定します。

  6. 失踪届の提出: 確定から10日以内に、市役所へ「確定証明書」と共に届出をします。これで初めて戸籍に「死亡」と記載されます。

このように、申し立ててから全て終わるまでに、早くても半年、長ければ1年程度かかります。 相続税の申告期限(10ヶ月)が迫っている段階で慌てて始めても、間に合わない可能性が高いのです。

 

4. よくある勘違い!「高齢者消除」は死亡ではない

  1. ここで、非常に多い落とし穴について解説します。 行方不明の親族の戸籍を取り寄せた際、身分事項欄に「高齢者消除(こうれいしゃしょうじょ)」と書かれていることがあります。

    これは、「戸籍上は生きていることになっているが、120歳を超えており生存の見込みがないため、役所が職権で戸籍から消しました」という行政上の整理に過ぎません。

     

 

法律上は「生きている」扱い

  1. ここが重要です。高齢者消除で戸籍から名前が消えていても、法律上の「死亡(相続の開始)」の効果は発生していません。 そのため、このままでは遺産分割協議はできませんし、不動産の名義変更も通りません。

    「戸籍から消えているから大丈夫」ではなく、高齢者消除されている人であっても、改めて「失踪宣告」の手続きを経て、法的に死亡させる必要があるのです。

     

 

5. もし、本人が生きて帰ってきたら?

  1. 失踪宣告で「死亡」となった後に、ひょっこり本人が帰ってくることも稀にあります。 その場合は、本人や家族が裁判所に請求して、失踪宣告を取り消してもらいます。

    • 戸籍: 生存に戻ります。

    • 遺産: すでに分けてしまった遺産については、「現に利益を受けている限度」で本人に返還する必要があります(全部元通りに返さなくても良いケースがあります)。

    •  

まとめ:10年以上の音信不通は、早めに弁護士へ

  1. 「どうせ連絡がつかないから」と放置している間に、他の相続人も高齢化し、事態はより複雑になっていきます。 特に、戸籍を見て「高齢者消除されているから解決済み」と誤解されているケースは要注意です。

    • 行方不明から7年以上経っている

    • 戸籍に「高齢者消除」とあるが、相続手続きが進まない

    豊橋・東三河エリアでこのような状況にお困りの方は、早めに当事務所へご相談ください。 失踪宣告は時間がかかる手続きです。いざという時にスムーズに相続できるよう、平時のうちに準備を始めましょう。

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