清水誠治法律登記事務所

【盲点】「孫に遺産を!」が招く”争族”トラブルと、プロが教える「2割加算」の損得勘定

「長生きするのはめでたいが、子供たちももう還暦近い。老いた子に財産を渡すより、これから未来のある孫に直接渡したい」

長寿化が進む日本において、このような「孫への資産承継(世代飛ばし)」を希望する方が急増しています。教育費、留学費用、結婚資金……可愛い孫のためなら財布の紐も緩むというもの。

しかし、日本の法律は「孫への相続」に対して、意外なほど冷徹です。

何も対策をしなければ、孫は1円も受け取れません。逆に、良かれと思って渡した財産が、税務署のターゲットになったり、兄弟間の骨肉の争いを招いたりすることも。

今回は、孫に賢く資産を残すための「抜け道」と、絶対に知っておくべき「2割加算」というペナルティについて解説します。

 

法律の壁:孫は「蚊帳の外」が原則

まず、残酷な現実を確認しましょう。 民法が定める「法定相続人」のルールでは、配偶者と「子」が最優先です。子が生きている限り、孫には遺産を受け取る権利(相続権)は一切ありません。

「おじいちゃんっ子だったから」という感情論は、法廷や銀行窓口では通用しないのです。 この「法律の壁」を突破し、孫に資産を届けるには、意図的に以下の「3つのルート」を作る必要があります。

 

 

壁を越える「3つの裏ルート」

① 遺言書による「指名」

最も王道かつ確実な方法です。遺言書に「孫の〇〇に、預金△△円を遺贈する」と書き記すこと。 ただし、これは諸刃の剣です。「長男の息子(内孫)にはやるが、次男の娘(外孫)にはやらない」といった偏った内容は、親族間の怨恨を生みます。他の相続人の「遺留分(最低限の取り分)」を侵害しない配慮が必須です。

 

② 孫を「養子」にする

ウルトラCとも言えるのが、孫との養子縁組です。養子になれば、法律上は「実子」と同格になり、堂々と相続権を得ます。 メリット: 相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の枠が増え、節税効果が高い。 注意点: 節税目的があからさまだと税務署に否認されるリスクがあるほか、法定相続人に含められる養子の数には制限(実子がいれば1人まで)があります。

③ 代襲相続(だいしゅうそうぞく)

これは意図的な策ではありませんが、子が親(被相続人)より先に亡くなっている場合、その子の権利がそのまま孫にスライドします。この場合のみ、孫は「正当な相続人」として扱われます。

 

知らないと損する「2割加算」の罠

「よし、遺言書を書いて孫に全財産を渡そう!」 そう決断する前に、必ず知っておかなければならないのが「相続税の2割加算」というルールです。

日本の税制では、配偶者や子(1親等)以外の人が遺産を受け取る場合、支払う相続税額が20%増しになります。 孫は「2親等」にあたるため、遺言で財産をもらう場合も、養子になった場合も、基本的にはこの「2割増しペナルティ」の対象です(※代襲相続の場合を除く)。

「えっ、損じゃないか?」と思われますよね。 しかし、ここが計算のしどころです。 通常なら「父→子(課税)」「子→孫(課税)」と2回税金がかかるところを、「父→孫(1回だけ課税+2割加算)」で済ませる。 資産規模によっては、2割増しを払ってでも「世代飛ばし」をした方が、トータルの税金が安くなるケースが多いのです。

 

2024年以降は「駆け込み贈与」が通用しない?

「死んでから揉めるのは嫌だ。生きているうちに渡したい」 そのための生前贈与ですが、ここにも大きな法改正の波が押し寄せています。

これまで、亡くなる直前(3年前)に行った贈与は「相続財産」に持ち戻して税金を計算するというルールがありましたが、2024年以降、この期間が「7年前」まで延長されました。

つまり、「そろそろ最期かな」と思ってから孫に現金を配り始めても、その多くが相続税の対象になってしまうのです。 これに対抗するには、以下の非課税特例をフル活用するしかありません。

  • 教育資金の一括贈与(最大1,500万円): 学費や習い事代として。使途が明確で、”教育”という名目があるため親族の納得も得やすい。

  • 結婚・子育て資金(最大1,000万円): 若い世代への直接支援として有効。

  • 生命保険の活用: 受取人を孫に指定する。これは遺産分割協議の対象外になるため、確実に現金を渡せる「最強の遺言代わり」とも言われます。

     

まとめ:愛情を「数字」と「法律」に翻訳しよう

  • 孫への相続は、感情だけで突っ走ると、残された子供たち(孫の親やおじ・おば)の間に修復不可能な亀裂を生みます。

    「なぜ孫に渡したいのか」を家族会議で話し合い、「2割加算されてもメリットがあるのか」を税理士とシミュレーションする。 この冷静な準備こそが、お孫さんへの本当の「最後のプレゼント」になるはずです。

司法書士部門

0532-53-5640

営業時間
午前8時30分~午後5時30分

弁護士部門

0532-57-6635

営業時間
午前9時~午後5時30分

pagetop